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通信業者相手に民事調停の申し立てを行ったときの体験談

昨年、近隣の簡易裁判所で民事調停の申し立てを行いました。相手方は通信業者のNTTドコモ。

1.発端

今回、民事調停の相手方にしたのはNTTドコモ株式会社。2017年中旬、NTTドコモから3万近い携帯電話のパケット料金を請求され、私は「端末の瑕疵によるものであり不当な請求」と主張。以降、返金を求めて自主交渉を続けました。話は平行線、消費者センターに斡旋依頼を解決の目処は立たず。それで民事調停を決意したのです。

2.消費者センターの対応

自主交渉での解決が難しいと悟った私が頼った場所、それが消費者センター。消費者センターは全国の市役所・区役所内に窓口が設置されていますが、最近は非常勤職員が多くなっており、電話したとき担当職員不在で情報伝達スムーズにいかない場合が多いようです。私の場合もそうでした。

消費者センターは斡旋機関に過ぎないので、相手方が「応じない」と強固な姿勢を取ればそれまで。NTTドコモは、返金はもちろん、情報提供にも「前例がないから」の一点張りで全く応じませんでした。大手企業はどこも強気な姿勢をとるので、消費者センターを利用しても不当請求トラブルは解決できる可能性ゼロと思っておいた方が良いでしょう。

解決しないと分かっているのに、なぜ消費者センターを利用するのか?それは、調停を行なったときに「申立人(自分)は今回のトラブルを解決するため、あっちこっち走り回って手を尽くしましたよ」と裁判所にアピールするためです。何度も話し合いを重ね、消費者センターでも解決できなかったから、苦渋の決断で調停の申し立てをしたんですよ!という無言の主張をするんです。

そして、消費者センターが行った斡旋記録は、近隣の文書館で「情報公開請求」をすれば書面で取り寄せることができます。この書面は民事調停や訴訟をするさい、大いに役立ちます。

3.簡易裁判所で民事調停申し立て

自主交渉、消費者センターでも解決できなかったので、ここで民事調停を決心。民事調停の申し立てをする!と決めたら、まずは近隣の簡易裁判所に行きましょう。ネットや書籍には「簡易裁判所は書類の書き方しか教えてくれない!」などと書かれていますが、決してそんなことはありません。

今回、私は民事調停に関して本当に何の知識もないまま、簡易裁判所の担当窓口に突撃しました。「民事調停の申し立てをしたいんですが……」と相談すると、窓口の書記官はしっかりヒアリングをしてくれ、トラブルの内容を把握したうえで、「すでに支払いを済ませているなら、不当利得返還請求になりますね」という案内をしてくれました。

4.民事調停の必要書類を準備

裁判所に行き、窓口で説明を受けたあとは、民事調停の申し立てに必要な書類を用意しなくてはいけません。今回の民事調停では、以下の書面を用意しました。

  1. 調停申立書(申立書1枚・「紛争の要点」を必要枚数)
  2. 証拠書類(契約書や利用明細など、具体的な金額が分かるものが望ましい)
  3. 登記事項証明書(相手方が企業の場合に必要。1部につき600円)

1の調停申立書の書式と記載例は裁判所のサイトにありますし、近隣の簡易裁判所でも雛形をもらえるはずです。

2の必要書類は、料金明細や前述した消費者センターの斡旋記録など。

3の登記事項証明書は、相手方が企業の場合のみ必要になるもので、近隣の法務局に出向いて発行してもらう必要があります。相手方企業の住所が分かる書類を持って法務局へ行き、係員に尋ねてみてください。

必要経費(印紙・切手代)

民事調停の申し立てをするさい、手数料と切手代も必要になります。切手代は、相手方に調停申立書などの書面を送るとき必要になるもの。手数料は相手方に請求する金額によって額が変わり、印紙として納めます。切手と印紙は簡易裁判所内の売店で購入できるので、窓口で書記官に額を算出してもらいましょう。

5.必要書類を書く

5-1 調停申立書

調停申立書はA4サイズの紙です。簡易裁判所でもらうことができ、書き方もその場で教えてもらえます。下記サイトに申立書の記載例があるので、こちらもご参考まで。

申立書
出典:http://www.courts.go.jp/chiba/saiban/tetuzuki/l4/Vcms4_00000322.html

裁判所|申立て等で使う書式例(千葉簡易裁判所)

調停申立書は、まず鉛筆で下書きしてから窓口へ持っていき、そこで書記官(担当者)に確認してもらいます。書記官から不適切箇所を指摘されたら消しゴムで消し、ササッと書き直しましょう。訂正・誤りがなく、書記官からOKが出れば必要部数コピーをとります。コピーは、

  1. 裁判所の控え
  2. 相手方送付用

の2部必要です(※コピー機は裁判所内にもあります。料金は白黒10円)。鉛筆で自筆したものは、自らの控えとして保管しておきます。この辺も、しっかり窓口で教えてもらえるので心配は要りません。

■相手方とは……

民事調停では、調停を起こす人を「申立人」、起こされた側を「相手方」と呼びます。私は今回、NTTドコモ株式会社の本社を相手方にしました。もし企業にいくつか支部があり、どこを相手方にすればよいか分からないときは、その企業のカスタマーサポートに電話して聞いてみてください。簡易裁判所の書記官も、事前問い合わせを推奨しています。

ただし、問い合わせても教えてくれない企業もあります。私はNTTドコモのカスタマーサポートと、ドコモの東京インフォメーションセンターの2箇所に架電しましたが、「調停・訴訟に関する問い合わせには一切応じられない。裁判所を通してしか教えられない」と言われました。

いやいや、その裁判所の書記官が「裁判所じゃ分からないから、どこを相手方にすればいいか事前にドコモに確認してください」と言ってるんですが?と、呆笑。ドコモの返答を伝えると、書記官の方も困惑していました。

NTTドコモは本社が東京港区、そして全国にいくつか支店があります。福岡に住んでいる私が東京に出向くのはどう考えても無理なので、相手方の欄にはNTTドコモ本社の住所と代表取締役社長の氏名を書き、その上にある「送付先」に九州支社の住所を書きました。九州支社の住所は博多区。博多に支社があれば福岡の裁判所が管轄となるので、申立人である私が東京まで出向かなくとも大丈夫なのです。

5-2 紛争の趣旨

民事調停申立書には、下部に「紛争の趣旨(または申し立ての趣旨)」という欄があります。この欄には、なぜこの調停を起こしたか、その理由を簡潔に書きます。

トラブルの詳細や交渉の経緯など、詳しい内容は後述する「紛争の要点」に書いていくので、この「紛争の趣旨」欄には相手に請求したい金額のみを書いておけば大丈夫。金額はきちんと算出し、1円単位まで細かく書いておきましょう。また、逸失利益や休業損害を併せて請求する場合は、「10万円くらい」のような根拠のないどんぶり勘定はダメ。計算式を書き、根拠ある金額にしましょう。

5-3 紛争の要点

申立書と一緒に提出するのが、「紛争の要点」という書面です。これも簡易裁判所の窓口でもらいます。見た目は、横罫が入っているだけのレポート用紙ですね。この「紛争の要点」には、トラブルが発生してから行なった対応などを1、2……と箇条書きにしながら、時系列に沿って書いていきます。自分を申立人、相手を相手方と書く以外は制約がないので、自由に書いてOK。ただ、以下の点には注意しておきましょう。

■紛争の要点を書くときの注意点

  1. 主語は申立人(自分)、相手方で統一する。
  2. 日付は平成◯◯年◯月◯日と具体的に書く。
  3. 金額は1円単位まで具体的に書く。
  4. 不当請求された使用料をすでに支払っているなら、「請求料金は支払い済み」という文言を入れる。
  5. できるだけ客観的に書き、個人的な感情や主観を入れることは控える。

■私が「紛争の要点」に書いたこと

私が「紛争の要点」に書いたことが以下。

  1. 相手方と契約を締結した日時。またその契約内容(プラン名など)
  2. Xperiaに不具合が生じ、トラブルが発生した日時
  3. このトラブルに対し、NTTドコモが行った説明
  4. NTTドコモの説明に対する反論
  5. 消費者センターに斡旋を依頼した日時
  6. ドコモショップで受けた説明など

①民事調停の申立書、②紛争の要点、③証拠書類、④登記事項証明書がすべて揃い、書記官のチェックを通ったら、あとは民事調停の日時が決まるまで待機。簡易裁判所から封書(サイズは長3)が郵送で届くので、この書面で調停の日時を確認します。

以上が、ざっくりとした民事調停の手続きです。

裁判所で手続きを済ませたら、後日郵送で「調停期日呼出状」が届きます。以下画像は、実際に私が受け取った調停期日呼出状。

調停期日呼出状_黒塗り2

調停期日呼出状には、裁判所に出廷する期日と場所が記載されているので、必ず確認しておきましょう。

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