スマホのパケット不当請求で通信事業者を提訴する場合の訴状見本2(請求の原因)

訴状の作り方アイキャッチ

今回は、「常時Wi-Fi接続でスマホを使用しているとき、モバイルデータ接続設定が勝手に変更されパケット通信量が発生した。通信事業者D社から高額なパケット使用料金を請求され、契約解除されないために一応支払ったものの未だに納得いかないので提訴したい」という経験をした私が、自らの体験に基づいて作成した不当利得返還請求の訴状見本【その2】をご紹介します。

私は本人訴訟するつもりでおり、提出書面も9割がた作り終えていたんですが、仕事のスケジュール問題がネックとなって提訴を断然せざるを得ませんでした。

スマホ関連の不当利得返還請求事件はまだまだ数が少なく、ネット上で情報を探すにしても大変な時間と労力がかかります(実際に私がそうでした)。そこで、情報を共有する意味でも、実際に作成した書面はすべて公開してほうが良いかもと思った次第です。被告となる通信事業者名は、一応「D社」にしておきます。まあ伏せ字にしてもバレバレでしょうが、一応。

本人訴訟では、「第1 請求の趣旨」と「第2 請求の原因(紛争の要点)」の訴状2枚が、それぞれ必要となります。第1 請求の趣旨の見本は以下記事内に掲載していますので、ご参考まで。

参考スマホのパケット不当請求で通信事業者を提訴する場合の訴状見本【請求の趣旨】

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構成

「第2 請求の原因(紛争の要点)」は以下の7項目構成にしました。

  1. 事案の概要
  2. 前提となる事実関係
  3. 被告との交渉経緯
  4. 通信料金の請求及び料金の支払
  5. 被告の主張
  6. 被告の不法行為
  7. 結語

本記事では見本部分を枠で囲み、日付・住所・請求額など個人情報に関する部分は「■■(黒塗り)」にしています。

文末にある(甲6-P19の391)といった表示は、証拠書面に割り振った番号(甲○)・ページ数・行数なので気にしないでください。

また、見本内で「身バレしそうだな……」という部分は、一部割愛しています。読みにくい箇所があるかと思いますが、私はまだ社会的に死にたくはないので、ご了承ください。

訴状見本2(紛争の要点)

第2 請求の原因(紛争の要点)

1、事案の概要

本件は、電気通信事業者である被告との間で、携帯電話端末を利用する電気通信役務提供契約(Xiサービス契約)を締結した原告が、携帯電話端末に行なったモバイルデータ接続の無効化設定が許可なく変更されたことにより発生したパケット通信料として被告から■万■千■円を請求され、これを支払ったことに関し、①パケット通信に関して虚偽の説明を行い、同時に携帯電話の接続設定が変更されるリスクについての説明義務を怠ったことについて、電気通信事業法26条及び消費者契約法4条2項若しくは公序良俗に無効であると主張し、不当利得返還請求権に基づき、被告に対し支払ったパケット料金の■万■千■円と、本件対応により生じた休業損害■万■千■円及びこれに対する訴状送達日の翌日から支払い済みまで生じた法定利益率6分の範囲内である年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるか、または②使用者に予見できない動作をする携帯電話は、通信機器が通常有すべき安全性を欠いているとして、製造物責任法2条2項に反し、不当利得返還請求権に基づき、被告に対し支払ったパケット料金の■万■千■円と、本件対応により生じた休業損害■万■千■円及びこれに対する訴状送達日の翌日から支払い済みまで生じた法定利益率6分の範囲内である年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

2、前提となる事実関係

(1)本契約の締結

原告は、平成25年■月■日、電気通信事業等を目的とする株式会社である被告との間で、携帯電話を利用する電気通信役務提供契約であるXiサービス契約(以下、本契約)を締結した。

原告が本契約締結時に購入した本件携帯電話の機種名、加入した主な料金プランは、次のとおりである。

ア 機種名 Xperia Z1 SO-01F(SONYモバイルコミュニケーションズ製)

イ 基本料金プラン タイプXiにねん

ウ SPモード

エ 料金割引プラン Xiパケ・ホーダイライト

なお、タイプXiにねん、Xiパケ・ホーダイライトは平成26年8月31日で新規申し込みが終了している。

(2)本契約締結から本件発生に至るまで

ア 原告は、平成27年■月、(※ここは普段の生活スタイルについて言及しており、そのまま載せると身バレする可能性があるため割愛)。そのため、同年■月ごろから携帯電話を野外に一切持ち出さず、自宅内での使用にとどめていた。

原告の自宅にはWi-Fi設備があり、本件携帯電話でも常にWi-Fi接続を行っていたため、長期間パケットが発生していなかった。このため、Xiパケ・ホーダライト契約が不要と考えた原告は、被告に、本件携帯電話にモバイルデータ接続を無効化する設定を行えばパケットが発生しないことを確認したうえで、平成28年■月■日、Xiパケホーダイライトを解約した。解約にあたり、原告が行なった設定は以下の5つである。

(ア)モバイルデータ通信を無効にする

(イ)モバイルデータの自動接続をオフにする

(ウ)バックグラウンドデータ制限をオンにする

(エ)スリープ時のWi-Fi接続→「接続不良のとき無効にする」をオフにする

(オ)アプリの自動更新をオフにする

イ 原告が、■月分の請求金額確認のため、平成28年■月■日、マイページにログインし料金明細を見ると、身に覚えのない高額なパケット通信料が発生していた。本件携帯電話の設定を確認すると、上記(ア)の「モバイルデータ通信を無効にする」という設定項目のチェックボタンが外れており、原告の許可なく接続設定が変更され、モバイルデータ通信が行われていた。

パケット通信が行なわれた日時は平成28年■月■日から■月■日までの計■日間で、発生したパケット通信料金は、計■万■千■円である(甲1、甲2、甲3、甲4)。

3、被告との交渉経緯

(1)原告は、平成28年■月■日、D社カスタマーサポート(以下、D社CS)に電話したが、この中で被告は「設定が変更されたのは本件携帯電話の故障か、アプリの干渉によるもの」であろうとの推測にとどまり、原因の特定は困難との見解を示した。一方で、一部契約者から過去にも同様の問い合わせがあったことは認め、接続設定が勝手に変更されるトラブルに関しては、被告側でも把握していると説明した(甲6-P19の391)。

(2)原告は、その後、被告から■月■日に遡っての新パケットプラン再加入による救済案を提示された。しかし、本契約はすでに新規申し込みが終了している「旧料金プラン」に属するものであるため、現在被告が提供している新パケットプラン(データパックプランS・M・L)のいずれとも、組み合わせることができない。

旧料金プランを解約し、新料金プランに変更すれば毎月■千■円の増額となってしまうことから、原告はこの救済案が全く救済にあたらないとして、加入を拒否した。

(3)平成28年■月■日、原告は■■■消費者センターに本件を相談し、センター職員を通じて被告との交渉を続けた。しかし被告は、過去に同様の報告がないことや、サービスの公平性を保つため、救済案以外の対応はできないという主張を続けた。

その結果、これ以上話し合いを続けても解決は難しいとして、平成28日■月■日、消費者センターから斡旋の打ち切りを打診され、原告はこれを了承した。

(4)平成28年■月■日、原告は、■■市が開催する無料法律相談窓口で本件を相談した。そのさい、相談にあたった弁護士から民事調停を提案されたため、後日申立てを行い、平成29年■月■日、被告と民事調停(平成■■年(■)第■■■号不当利得返還請求調停事件)を行なったが、被告が依然として「サービスの公平性を保つため返金には応じない」との主張を続けたことから、不成立となった。

4、通信料金の請求及び料金の支払

原告は、料金未払いによる本契約期間中の契約解除を防ぐため、被告より本件通信に係る通信料金 として請求されたパケット使用料■万■千■円をすでに支払っている。

5、被告の主張

(1)被告は、接続設定が利用者の許可なく変更されるという本件携帯電話の動きについて、その原因を、原告自らが野外に持ち出して使用したか、本件携帯電話の故障、アプリ同士の干渉の3つ以外に考えられないと主張している。

ア 原告が野外で使用した可能性

原告は、(※ここは普段の生活スタイルについて言及しており、そのまま載せると身バレする可能性があるため割愛)だったため、携帯電話を野外に持ち出す必要性がなかった。
モバイル接続設定が変更された平成28年■月■日も、原告は終日、自宅内で過ごし、本件携帯電話を野外に持ち出していない。これは、原告が入居しているマンションに設置している監視カメラ映像で証明できる。

イ 本件携帯電話故障の可能性

原告は、被告が提供している診断ツールにて本件携帯電話の検査を行い、端末本体に故障がないことを確認し、被告にもその結果を通達している。

設定が使用者の許可なく変更される、という動作が他機種でも発生し、ネット上や消費者センターに同様の報告が多数寄せられてる事を考えると、本件携帯電話そのものが故障している可能性は極めて低いと言ってよく、むしろ、こうした動作不良はAndroid OSを搭載している携帯電話全機種が内包している瑕疵であると考えるのが妥当である。

ウ アプリの干渉

本件携帯電話が搭載しているAndroid OS 4.4.2では、設定が変更される場合に必ずポップアップ画面が表示される仕様となっており、このポップアップ画面に触れて設定変更を許可しない限り、たとえアプリの干渉が起ころうと設定が変更されることはない、と被告自らが主張している(平成28年■月■日、原告がD社CSとの通話内で確認)。よってアプリの干渉によって接続設定が変更された可能性はない。

(2)被告は、「モバイルデータ通信設定が変更されたか否かは、本件携帯電話のツールバーに表示されるアイコンで確認できる、よって原告は設定が変更されたことを認識しながら本件携帯電話を使用していた可能性が高い」とも主張している。しかし、アイコンは流動的であり、常に同じものが表示されることはない。したがって、ツールバーのアイコン表示から、原告が、設定が変更されたことを知るのは極めて困難であると言わざるを得ず、変更されたことを認識しながら本件携帯電話の使用を続けた根拠とはならない。

6、被告の不法行為

(1)被告の情報提供義務および不実の告知【電気通信事業法26条、消費者契約法4条2項】

ア 原告は、パケット定額オプションを解約するにあたり、事前にD社ショップへ出向いて端末設定の説明を求め、D社CSにも同様の問い合わせを行なった(甲10)。被告は、こうした原告の事前問い合わせに対し、十分な説明を行ない説明義務は果たしている、と主張している(甲11)。

しかし、このとき被告が行なった説明は「たとえ端末側にモバイル通信の無効化設定を施しても、アプリやシステムは水面下でモバイル通信を行なうものであるから、どうしても大量のパケットが発生する。よって、パケット定額オプションの解約は危険だ」という趣旨のものである。しかし、これは被告が消費者の危機感を煽ってパケット定額オプションの解約を思いとどまらせようとするための方便に過ぎず、事実とは異なる虚偽の説明である。

Android OSを搭載した端末は、たとえアプリやシステムがモバイル回線での通信を必要としても、その端末自体にモバイルデータ通信の無効化設定を行っている場合、モバイル回線を使用しての通信は一切行われず、パケットが発生することもない。ただし、本件のように、端末の瑕疵によって接続設定自体が許可なく変更されてしまった場合は例外である。

よって、本来ならば被告は「本件携帯電話には、使用者の許可なく設定が変更されてしまう瑕疵があり、端末側にモバイルデータ通信を無効にする設定を行なった場合でも、この瑕疵によってパケットが発生する可能性がある」との説明をするべきであって、従来の説明では到底、十分な説明責任を果たしているとは言えない。

このように、本件携帯電話に端末の設定を使用者の許可なく変更するリスクが備わっていることを意図的に消費者へ説明せず契約締結を迫るのは、消費者の無知を利用し利益を得ようとする行為で、きわめて悪質である。

原告は、平成28年■月■日、本件携帯電話には、利用者の意思に関わりなく無断で設定が変更・リセットされるリスクが備わっており、「端末設定が100%維持される保障はない」ことを、被告から初めて聞かされた(甲6-P15の305)。

本契約締結時や料金プラン変更時には、このリスクについての口頭説明がなかった。また、説明書等にも記載がないので、原告は当然このリスクを知らなかった(甲6-P16の328)。

電気事業者である被告には、原告に対し、消費者が最低限理解すべき提供条件について説明する義務がある。被告が消費者に対し、日常的に虚偽の説明や説明義務違反を犯しているのは明白で(甲13の1~5)、本件においても、こうした高額請求を誘発する動作についての適切な指示や警告の情報提供をしていないことは明らかな説明義務違反にあたり、不法行為責任を免れない。

イ 事業者が、一般消費者と契約を締結する際には、契約交渉段階において、相手方が意思決定をするにつき重要な意義をもつ事実について、事業者として取引上の信義則により適切な告知・説明義務を負い、故意又は過失により、これに反するような不適切な告知・説明を行い、相手方を契約関係に入らしめ、その結果、相手方に損害を被らせた場合には、その損害を賠償すべき義務がある。

(2)公序良俗法違反【民法90条】

情報力及び交渉力において消費者と格差のある事業者である被告は、消費者に高額なパケット通信料金が発生するのを防止するため、パケット通信サービスやそれに関する設定・操作に関して十分な情報提供を行い、同サービスの利用により通信料金が高額化することを防止するための措置 を採るべき義務がある(甲12)。消費者が必要とする情報の不告知や、利用者の無知を利用し不当な利益を得ようとする行為は、「公序良俗違反」である。

(3)瑕疵担保責任【製造物責任法2条2項】

「端末の接続設定が許可なく変更される」という本件携帯電話の動作を、利用者が事前に予見し回避するのは不可能である。また、設定が変更されるタイミングに規則性がないこと、本携帯電話には設定変更を知らせる通知機能等が備わっていないことから、万が一設定が変更されても、利用者がそれを察知する手段がない。

利用者が予見できない動作を行い、高額請求を誘発してその財産を脅かすリスクのある携帯電話は、設計そのものに欠陥があると言わざるを得ず、これは製造物責任法2条に反する。したがって、被告はその瑕疵担保責任を負うべきである。

7、損害

(1) 積極損害

ア パケット請求額

(ア)金■万■千■円(平成■年■月■日~■月■日発生分)

(2) 消極損害

※割愛

8、結語

よって、原告は被告に対し、金■万■千■円と、上記債務の履行遅滞に基づく元金に対する訴状送達の日の翌日から支払い済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。

■訴状見本に関する補足

私は法律の専門家ではないので、訴状を作成するにあたっては以下の本や情報を参考にしました。

    • 「臆病者のための裁判入門」橘玲著(本の詳細はこちら
    • 民事訴訟法 安西朋子ほか著(本の詳細はこちら

そして文中に引用した証拠の一覧がこちら(※証拠として提出する書面は、別途「証拠証明書」にまとめる必要があります)。

甲1:D社の通信明細記録(平成28年■月分)

甲2:D社の通信明細記録(平成28年■月分)

甲3:D社の通信料金記録(平成28年■月分)

甲4:D社の通信料金記録(平成28年■月分)

甲5:D社CSとの通話を録音したCD-R(平成28年■月■日に録音)

甲6の1~22:甲5号証の反訳書

甲7の1~3:(割愛)

甲8:(割愛)

甲9の1~20:「消費者センター相談情報」という書面

甲10:メール画面(件名「モバイルデータ通信について」)を印刷した書面

甲11の1~2:平成■■年(■)第■■■号不当利得返還請求調停事件 の回答書

甲12:京都地方裁判所平成24年1月12日判決 平成22年(ワ)第3533号 通信料金返還請求事件

甲13:Twitter画面を印刷した文書

甲14:「携帯解約で後味の悪さ」と題する記事(平成29年2月5日読売新聞朝刊)

甲15:熊本県ホームページ(「緊急!消費者トラブル注意報13号」)を印刷した文書

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