映画刀剣乱舞を観てきました。そして刀剣乱舞のメディアミックスに抱いていた積年の不満が爆発しました。以下、これまでのメディアミックス展開を追ってきた面倒くせえ審神者の鬱積。いやほんとマジで面倒くせえ審神者ですまない……
アイアム・メディアミックス苦手芸人
私が刀剣乱舞のメディアミックス苦手になったのは割と最近、具体的には2017年からです。
刀剣乱舞というコンテンツにおいて最低限守られるべき世界観、共有すべき設定が脚本家の独自解釈に侵食されて刀剣乱舞ONLINEから乖離しはじめ、「これははたして刀剣乱舞なのか?刀剣乱舞っぽい別の何かじゃないのか?もはやそういう概念的なアレじゃないのか?」と思うことが増えた。
あと、メディアミックスどれもSFに振り切りすぎな気がする……。和の世界観に惹かれて刀剣乱舞ONLINEはじめた人間なのであれで相当萎える。メディアミックスの中で特にSF要素が強くファンタジー丸出しなのは、活撃刀剣乱舞(以下、活撃)と舞台刀剣乱舞(以下、刀ステ)の2作。
活撃は、2205年という刀剣乱舞ONLINEの設定を活かし、最先端のテクノロジーを積極的に取り入れている「ハイテク本丸」が舞台。
ドラえもんズ化したこんのすけや、椅子に座って食事するハイカラ刀剣男士はわりとガチめに解釈違いなんですが、こうした要素は刀剣乱舞において絶大な効果を発揮する魔法の呪文「ウン万人も審神者がいるのだから別に不思議じゃない。刀剣男士にも個体差が生じるのだからこういうのもアリ。そもそもこれはとある本丸の話」で(一応は)飲み込むことができる。
でも活撃の戦闘シーンは無理です。あれは無理。活撃第7話終盤、三日月は歴史遡行軍と戦闘に入るのですが、刀を一閃するとその先っちょから三日月紋のエフェクトがブワーッと出現するんですね。これ観て私は「アッー、解釈違いですゥ!」と頭抱えてしまった。
なんかもう色々と面倒くせえ審神者で申し訳ない。でも私が活撃に期待したのは三日月が空中ビュンビュン飛び回るハリーポッターみたいなSF全開の殺陣じゃないのです。エフェクトババーンみたいなやつでもない。今は人間の身体を得ているのだからもっとこう……人間臭くて地に足ついてる感じの、とことんフィクション臭を消したOVAるろうに剣心追憶編みたいな殺陣、そういう感じのやつを求めていた。
刀剣男士は日本刀の付喪神、であるからして当然戦闘で使用する武器は日本刀、それも自身の刀身です。そんな刀剣男士の殺陣は地味だが洗練されている武人の身のこなしをこそ追求すべきで、あんなハリーポッターみたいに飛び回って、どっかのセイバーみたいに敵を倒してエフェクトブッシャ~~したら刀剣乱舞の世界観が台無し。世界観ブチ壊しですよもう。ユーフォすぐそういうことする。
そして活撃13話では、三日月が刀を一閃したらなぜか敵がドバっと数十体くらい消滅する。ここも「アッ、アウトー!」と1人でドン引きしていました。
重ね重ね面倒くせえ審神者ですまない。でも私が「最低限守られるべき刀剣乱舞の世界観や共通設定を脚本家の独自解釈が侵食している」と言わずにおれないのはこういうところなんです。
審神者のみなさんはご存知でしょうが、ゲーム刀剣乱舞ONLINEの白兵戦において、太刀は一撃で複数の敵を討つことはできません。一撃で複数の敵を討てるのは、薙刀と大太刀のみ。であるにも関わらず、活撃はそこら辺の設定ガン無視。三日月宗近がいかに強く圧倒的存在であるかを示すためなら刀種やステータス、大太刀の存在意義などどうでもええんじゃ、と。ユーフォすぐそういうことする。
そもそも、活撃13話終盤の舞台になっている函館、刀剣乱舞ONLINEではチュートリアルが行われる超初心者向けステージで歴史遡行軍の編成は短刀と脇差のみ。つまり本来は敵打刀も敵大太刀も出現しないのです。
画像:刀剣乱舞ONLINE、函館ステージのボスマス敵編成
にもかかわらず活撃では、主役格の和泉守兼定・堀川国広と彼らの元主・土方歳三の別離を描くために、そして第一部隊・第二部隊の共闘という見せ場を作るために、刀剣乱舞ONLINEの「函館ステージ、幕末改変函館方面土方戦死阻止隊」編成を「敵打刀、敵大太刀なんでもあり!」に脚色している。
プロット主導にすれば短刀・脇差編成のままでも十分魅力的なストーリーが作れたと思うのですが、活撃はゲーム設定を脚色するという安易な選択をした。当方、大変面倒くせえ審神者なので審神者・本丸・刀剣男士に個体差が生じるのは理解するが、政府・歴史遡行軍・刀剣男士ステータスにまで差が生じるのは看過できない。
「これはとある本丸の物語」は「脚本家が独自解釈を加えて好き勝手してもいい」という意味ではない。そのための免罪符ではない。
刀剣乱舞というコンテンツの根本まで各脚本家に丸投げしてるニトロにも責任はあります。「時の政府」「歴史遡行軍」「刀剣男士ステータス」みたいな根本部分は不可侵で、その縛りの中で自由にやってくださいスタイルなら刀剣乱舞のメディアミックスももう少しマシなものになっていたかもしれない。ニトロが設定全部丸投げするからメディアミックスが脚本家の独自解釈で捏ねくり回され、似非刀剣乱舞みたいになっちゃうんですよ。
刀ステ……刀ステはもう何を語ってもネタバレになってしまうので自分の目で確かめていただくほかないのですが、私は脚本家が勝手にあのような概念を持ち込み、お得意のゴシックホラーテイストで刀剣乱舞の世界観をシッチャカメッチャカにしはじめた頃から「もうやりたい放題だなァ……」と思っていました。メディアミックスの中で、刀剣乱舞ONLINEから最も乖離しているのが刀ステです。
キャラ崩壊
そしてメディアミックス初期からずっと許せなかったのが刀剣男士のキャラブレ。
顕現した刀剣男士が「歴史改変すれば元主を救えるのではないか……」と葛藤するのは、まあ理解できるんですけれども、独断で隊から離脱し仲間に刃を向けて任務を阻みまくるの最高に解釈違いです。
メディアミックスでは元主への思いを抑えきれず、隊を離脱して暴走する刀剣男士が次から次へと登場します。何度もそういうの見せられるとね、「君らどんだけなんだよいつまでもウジウジウジウジ悩んで堂々命令違反したあげく遡行軍取り逃がすし仲間に刀を向けるし元主大事は分かるけれども昔は昔今は今と割り切れるくらいの分別は持っていると思っていたのにとんだ見込み違いですよォ!」と、面倒くせえ審神者はやっぱり頭を抱えてしまう。自分の欲求を満たすより、仲間を選ぶゲームの彼らとはえらい違い、まるで別人(刃)のようではないか。
そして三日月宗近。刀剣乱舞の顔なのでメディアミックスでも推されまくっていますが、推されれば推されるほど私の中で彼の株が下がっていきます。私は「三日月宗近」という刀は泰然自若とし、仲間思いで、もちろん主である審神者のことも大切に思っているし、歴史とその歴史を紡いできた人間を愛し慈しむこともできる優しさの権化、かつ本丸の刀剣男士たちを見守るおじいちゃんポジでときには厳しい一面もみせる、そんな刀剣男士と三日月宗近は互いに頼り頼られる存在だと思っていたのですが、メディアミックスの三日月は独りよがりの超個人主義者で仲間をさほど信頼してない老害クソジジイにみえる。正直、刀ミュでも刀ステでも映画でも仲間を振り回しまくっててイライラします。
なぜメディアミックスの三日月宗近は毎回ああいう「老獪な刀」風にされてしまうのか。なぜ脚本家は揃いも揃って三日月をコミュ障にしてしまうのか。これを「個体差」で片付けてしまってよいものか。というか、脚本家の先生方ちょっと審神者の二次創作に影響されすぎではないか。
私は刀剣乱舞ONLINEのボイスも回想もすべて手に入れてますが、ゲームの三日月宗近はそれはもう実直で素直な刀ですよ。
「映画 刀剣乱舞」の感想
最後に、先日公開された映画刀剣乱舞の感想を少しだけ。
私は刀剣乱舞(というかほぼ刀ステ)が映画化されると聞いたとき、「映画刀剣乱舞は審神者の予想の上を行く理詰め骨太時代劇に仕上げてほしいなァ……最近はコスプレ時代劇的作品が増え、これが興行的にも成功しちゃうもんだから映画関係者と俳優が『このままだと時代劇が滅びる!』と嘆いてる。本格的時代劇を作ることで刀剣乱舞が映画の歴史をも守ろうとしたら審神者泣いてしまうなァ……」などと思っていたのですが、蓋開けてみると審神者の期待を裏切ってこない安定のコスプレ時代劇だったという……買いかぶってすまない!
私感ですが映画刀剣乱舞は、元々バランスブレイカー的存在の三日月宗近を「刀剣乱舞の顔だから」と無理やり主人公に据えたのが一番の失敗かな、と。まあ、これはどのメディアミックスにもいえることなんですけれども。
脚本も明らかにライトファン向けで、刀剣乱舞ではすでにやり尽くした感のある織田信長暗殺を、奇をてらわずさらっと撫でるような内容。理詰めでゴリゴリ押しまくる本格時代劇を期待すると間違いなく肩透かしくらいます。あと、この映画に登場する織田信長は歴史クラスタ兼審神者をかなりイラッとさせるタイプの織田信長だと思いました。私は最高にイラッとした。