沼田氏の内紛を描く、池波正太郎「まぼろしの城」書評

まぼろしの城

上野の国にある小国、沼田のお家騒動を描いた、池波正太郎著「まぼろしの城」。今回は真田太平記の前日譚に位置する本書のあらすじと、その感想。

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「まぼろしの城」主要な登場人物

■沼田顕泰(沼田万鬼斎)

「豪勇無双」と謳われた、上野国・沼田城の城主。国人。

■金子新左衛門

上野国利根の郡・追貝村の名主であり地侍。立身のため、娘・ゆのみを沼田顕泰の側室にし、その子・弥七郎を沼田の跡継ぎにしようと画策する。金子美濃守。

■ゆのみ

金子新左衛門の娘。沼田顕泰の側室となり、蔵内城(のちの沼田城)に移って以後は「欅御前」と称す。沼田顕泰の四男、平八郎を産む。

■沼田平八郎景義

沼田顕泰の四男。家督争いによって沼田を追われ会津に身を寄せるが、のちに金山の由良国繁の庇護を受け、沼田城奪還のため挙兵する。

■沼田弥七郎朝憲

沼田顕泰の三男。正室・於牧の方の子。家督を継ぎ、沼田城主となるも、平八郎を城主に据えたい新左衛門の調略にはまってしまう。

■真田安房守昌幸

武田家家臣。上州・上野領主。武田勝頼の命で沼田城を攻略し、沼田一帯をその支配下に置く。

文量・時系列

総ページ数は304p、全九章構成。本作で描かれているのは、天文二十年~天正九年です。ページの割に文量が少ないので、読了目安は3時程度。戦国時代によくある一家の世継ぎ争いを題材にとった作品ですが、池波正太郎作品らしいエンターテイメント性を備え、年齢問わず誰でも気軽に読むことができる作品ですね。そして、最後に美味しいところ全部持っていく真田昌幸がズルい。

「まぼろしの城」のあらすじ

娘を領主・沼田顕泰の側室にすることに成功した金子新左衛門。顕泰の信頼を得て、沼田家家臣としての地位を着々と築いていく。一方、顕泰の側室となり沼田城へ移った新左衛門の娘・ゆのみは、平八郎という男子を産む。顕泰にはすでに三人の男子がいたが、家督を継ぐのは三男の弥七郎朝憲だと噂されていた。

なんとしても平八郎に家督を継がせたい新左衛門とゆのみは、弥七郎の暗殺計画を企て、顕泰をも利用した一世一代の調略を仕掛ける。しかしこの調略は、「ある誤算」によって思わぬ顛末を迎えるのであった。何も知らされないまま跡継ぎ争いに巻き込まれた平八郎は、沼田を追われ、会津・芦名盛氏のもとへ身を寄せる。

一方、甲越同盟が成立し、武田勝頼から沼田城攻略を命じられた真田安房守昌幸は、巧みな調略で沼田城を開城させ沼田一帯をその支配下に置いていた。そして天正九年、金山の由良国繁の軍勢と旧家臣を率い、平八郎が沼田城奪還のため挙兵する。

「まぼろしの城」感想

真田太平記の前日譚とも呼ばれる本作。池波正太郎の「真田もの」の中では比較的地味な1作ですが、最終章(九章)で繰り広げられる昌幸の調略シーンはさすがの面白さです。史実を知らないまま読むと、どこからが昌幸の策なのか分からずコロッと騙されてしまうこと請け合い。

上野国の沼田氏とその内紛については諸説ありますが、本作は「加沢記」を下地にした創作になってますね。まあ沼田氏のお家騒動は歴史的にみるとさほど重要な出来事ではありませんが、こうした背景を知っておくと、その後繰り広げられる沼田城攻略戦、真田と北条の沼田裁定がさらに面白く感じられるはずです。

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