北九州市役所のサーモカメラ導入に関する私見および注意喚起

福岡県北九州市が、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、市内の公共施設にサーモカメラ(正式名称はサーマルカメラ)を試験導入したそうです。

感染症拡大を防ぐために、本庁舎南玄関にサーモカメラを導入しました【北九州市】

https://www.city.kitakyushu.lg.jp/soumu/333_00007.html

※現在、記事は削除済

北九州市役所にサーモカメラ : ニュース : 福岡 : 地域 : ニュース : 読売新聞オンライン
2020/04/28 05:00

https://www.yomiuri.co.jp/local/fukuoka/news/20200427-OYTNT50078/

※現在、記事は削除済

記事内には、サーモカメラ提供企業としてワイエスフード株式会社、M2C Science 株式会社の名前があがっています。

ワイエスフード株式会社が提供したサーモカメラと顔認証システムは、中国の江蘇潤和ソフトウェア株式会社の子会社である「株式会社ホープラン」が開発した「HiHopeマルチターゲットAI検温システム」。カメラに映った人間の体温を自動測定し、37.5度以上の熱があると警報音が鳴る仕組み。

深圳市轩火部落科技有限公司
ホープラン東京 会社概要

http://www.hoperun-tokyo.com/company/summary.html

M2C Science株式会社は、アメリカ産業安全保障局(BIS)の「エンティティリスト」に追加された中国企業DJIのドローン(INSPIRE ONE, INSPIRE TWO, PHANTOM 4 PRO, MATRICE 600)飛ばしまくってる株式会社スカイキャンバス代表・溝江英治氏が経営してるところ。

溝江氏は、日中平和友好条約締結40周年記念にパソナと中国国営中央テレビ(CCTV)が出資して作ったインターネットドラマ「料理人ワタナベ」のドラマ誘致や、TGCイベント、ミクニスタジアムの熊本ロックフェス誘致にも関わってる人。この時点で完全にお察し案件ですね。

公共施設に設置されたサーマルカメラはいずれも中国メーカーハイクビジョン製ですが、市は、この企業が人民解放軍(PLA)の軍事開発企業で中国電子科技集団(CETC)子会社と承知の上で設置したのでしょうか。

前述したように、ハイクビジョンはウイグルジェノサイドに関与して莫大な利益をあげ、同時に安全保障上の問題があるとしてアメリカ「エンティティー・リスト(EL)」に追加された企業。そのような企業の製品を設置しているということは、上記二点に関して特に問題視していないのでしょうか。

ウイグル弾圧の「刑務所国家」中国で大儲けする監視カメラメーカー|Newsweek

https://www.newsweekjapan.jp/amp/stories/world/2018/10/post-11176.php?__twitter_impression=true

アメリカではワシントン、サンフランシスコその他の州が議会で顔認証システムの危険性を指摘、のち使用禁止を決定し、規制に乗り出しています。また、欧米ではコロナ感染症対策を謳って顔認証システムを導入し、生体認証データ収集・監視を行うのは市民のプライバシー侵害である旨の有罪判決も出ています。

BILLS WOULD BAN FEDERAL USE OF FACIAL RECOGNITION

https://duo.com/decipher/bills-would-ban-federal-use-of-facial-recognition

公共の場での顔認識技術の使用禁止をEUが検討中

https://gigazine.net/amp/20200120-eu-temporary-ban-facial-recognition-public?__twitter_impression=true

中国製のサーモカメラ・顔認証検温システムを安易に導入するべきではないことは、上記の点からも明らかです。

そもそも、サーモカメラは体温ではなく顔表面温度を計測する機器であり、野外に設置すると環境温度の影響を受け高確率で誤差が生じます。公共施設の出入り口付近に設置して正確な測定が出来るとは到底思えません。脇で測る接触型体温計とサーマルカメラの検温結果を比べると、いつも0.5〜0.7ほど誤差が出る。もはや不良品のレベルでしょう。

IPVMも、ハイクビジョンの検温カメラは国際標準規格の要件(ISO)を満たしておらず、設置すると体温誤検知で逆にコロナ感染リスクを高める危険があると警告。マーケティングによる性能誇大を指摘しています。

Faulty Hikvision Fever Camera Deployments Spread In UK Healthcare Facilities

https://ipvm.com/reports/hik-hosp

Hikvision Alleges Forehead Only Fever Screening is Smart; It’s Actually Dangerous

https://ipvm.com/reports/hikvision-forehead

市は、このようなコロナ感染リスクを高め、かつセキュリティ上懸念のある機器を本気で正式導入するつもりなんでしょうか。北九州市役所に問い合わせたところ、総務局総務部総務課の担当者から返信がきました(2021年3月付)。その内容が以下。

・市役所本庁舎等で設置しているサーモカメラは、顔認証システムそのものではなく、顔認証システムを応用し、額の表面温度を測定するために人の顔の位置を割り出しているもの。

・カメラ本体にも、カメラを接続しているパソコンにも、顔画像や体表面温度測定結果を保存はしてないことを納品業者に確認済。サーモカメラおよびパソコンは外部ネットワークへは接続していない。

・サーモカメラが体温ではなく、表面温度を計測する事から、異常がある場合には医療用体温計を使用した再検温を実施している。

・来庁される市民を医療用体温計で一人ずつ測温することは不可能なため、たとえ誤差が生じるとしても、サーモカメラ設置にはすることには十分メリットがある。

・サーモカメラ設置により、新型コロナウイルスの感染リスクを高めるとは考えていない。現時点で市内施設でクラスター等発生していないことから、サーモカメラの設置自体が大きなリスクとなっているとは考えていない。

データの保存云々が問題なんじゃなくて、サーモカメラで監視すること自体がすでに市民のプライバシー侵害なんですよ。そして実体温より低い数値を出し、感染者素通りさせる可能性がある。

ハイクビジョン製のサーモカメラ、北九州市役所だけでなく、小倉井筒屋の本館出入口、西口出入口、新館西口の中ドアスペースにも設置されています。

小倉井筒屋本館東口01

井筒屋にも問い合わせてみたところ、サーモカメラは以前から取引のある業者に依頼して購入したもの、他社も同様の機器を使用しているが現状問題は生じてない、国や行政等からの特段の注意喚起も現段階ではない。客の安全のため、これからもサーマルカメラの検温は続けていく、とのことでした。

コロナウイルス感染拡大を防ぐためには、北九州市内各所に設置されているサーモカメラの数値を鵜呑みにせず、自分で接触型地体温計を使用した体温管理を行なうことが大切です。以上、注意喚起おわり。