観たドラマ 西郷どん17話「西郷入水」

大河ドラマ西郷どん_アイキャッチ

5月6日に放送されたNHK大河ドラマ「西郷どん」第17話。つい最近まで将軍継嗣問題やってたのに、斉彬が死んでからありえん速さで西郷・月照の入水まで来てしまいました。相変わらずペース配分が無茶苦茶ですね。

脚本に関しては未だに「雑」以外の感想がないんですが、斉彬の思想形成に多大な影響を及ぼす琉球王国をスルー、月照は出すのに梁川星巌や頼山陽はスルー、安政の大獄とも深く関わるアロー戦争および戊午の密勅等についても一切触れない脚本家・中園ミホ女史は、ウィキペディアでも読みながら本書いてるんでしょうか。通商条約どこいった?孝明天皇どこいったの?平野国臣は??

今回はそんな「西郷どん」第17回「西郷入水」の感想です。前回、斉彬の死を知らされ、毎度お馴染みの死んじゃおっかな詐欺をした西郷吉之助でしたが、単身尋ねてきた月照に説得(意味深)され再び井伊政権打倒へ向け動き出します。

が、その頃。幕府をないがしろにする戊午の密勅(なおこの密勅、本編ではほぼなかったことにされる。いつもの事)に憤慨した大老・井伊直弼が、戊午の密勅に関わった人間の摘発を開始。藩も朝廷も関係なく、怪しい奴を片っ端から捕え始めます。ここから第17話「西郷入水」へ。以下、感想です。

鹿児島に戻ってきた西郷と月照

大老・井伊直弼に目をつけられ、幕府のお尋ね者ツートップになってしまった西郷と月照。斉彬の亡霊を見たりしながら薩摩へ帰国した西郷は、月照を西郷家に匿い、藩主への助命嘆願を計画。しかし、斉興が薩摩に戻ってきたので今は下手に動かず隠れていてくれ、と大久保に釘を差されてしまいます。史実ではまず西郷が単身、薩摩へ帰国して根回しをするのですが、「西郷どん」の西郷は頭スカスカなので月照と一緒に帰国してから工作をはじめるようです。

そして始まる、西郷どん名物「本筋にまったく関係ない大奥パート」。篤姫改め天璋院は、新たな将軍となった慶福に「私を本当の母とお思いください」と微笑みますが、井伊直弼にあれこれ吹き込まれている慶福は「母上のことは信じられない」と拒絶。

見かねた幾島は「暇をもらって城を出たらどうか」と提案。しかし、すでに身も心も徳川の女になっている天璋院はこれを拒否。そこで幾島は自分が天璋院の代わりに大奥から去る決意をします。いわく「戦に破れた者が咎を受けるのは当たり前」と。

ここから数分に渡って天璋院と幾島の感動離別シーンが繰り広げられるんですが、このシーンいる?いやほんと、制作陣には一度よく考えてもらいたんですけど、鈴木亮平の尻とか、西郷と篤姫のロマンス未遂とか、天璋院と幾島の離別とか必要?

シーン切り替わって再び薩摩。

帰国した斉興とお由羅(+犬)に対面し、次期藩主は自分の嫡男・茂久にと申し出る久光。軍事視察中にいきなりバッターンと倒れ、そのまま死んだかに見えた斉彬ですが、死の床でちゃんと久光に「次の藩主は茂久に……」と遺言を残していたようです。最後まで見事な名君補正ですね。でもこんな遺言があるなら16話にそのシーン入れとくべきじゃないかなと私は思います。

斉興は久光の申し出を許可。その後、久光が「斉彬の意思を継いで卒兵上京します」と調子こいても、笑顔でウンウン頷いています。斉彬とあれだけ対立し、江戸ではロシアンルーレットまでやったというのに、隠居して丸くなられたんですかね。

後日、評議の席で新藩主・茂久が挨拶をしていると、そこに突然、斉興がやってきました。
先日、久光には「斉彬の意思を継いで挙兵する?よかろう!」的な態度を取ったくせに、「御公儀に目をつけられると困るから挙兵はなし、斉彬のやってたことはクソ」と主張を一転させ、「御公儀に目をつけられると戦争になるぞ、そんなの嫌だろ?ならワシにまかせておけ!」と藩士の恐怖をあおり、政権を掌握。全然丸くなってなかった。

この時、斉興は「財政改革で多額の借金を返し薩摩藩を立ち直らせたのはワシ!だから実権握るけど良いだろ?」と言い放つんですが、「西郷どん」ではその財政改革を全く描いていないので、視聴者も「え?」って感じですよね。物語の下地を作らず財政改革についてほとんど触れてこなかったツケが。

個人的に、斉興は保守的常識人なだけで時勢が読めない暗君ではないと思うんですが、脚本家は斉興をただの老害にして、斉興VS斉彬、斉興VS久光、という分かりやすい構図にしないと気が済まないんでしょうか。

とまあ、そんなこんなで藩政を斉興に掌握されてしまった久光は、不貞腐れて碁をパチンパチンと打っていました。大久保は「こんなとこで何をやっているのか」と、久光の尻を叩きますが、当の本人は聞く耳を持たず、大久保に碁石を投げつけて去っていきます。このあと「俺はあきらめない」と碁石を握りしめる大久保ですが、なんかこの演出も直虎ファンに媚びてる感じがする。

日向送りになる西郷と月照

斉興が実権を握った薩摩藩政府から、西郷と月照に日向送り(隠語)の沙汰が下ります。大久保は、山田を通して斉興に直談判。結果、「月照を斬れば西郷は助けてもいい」と言われます。

大久保から「斉興さまに直談判した」「月照を斬れば助かる」「西郷吉之助は日本にとって必要な男」「生きてくれ」と、主語の大きな説得をされ、「よか、斬りもんそ」と微笑む西郷。後日、小舟に乗り込み月照とともに夜の錦海湾へ漕ぎ出します。(なお、16話で薄々気づいてはいたけど平野国臣、本編ではなかったことにされる。いつもの事)

その頃、西郷家を訪ねていた大久保は、熊吉から「部屋に斉彬から賜った懐刀が飾られている」と聞かされ驚愕。「斬りもんそ」発言は嘘で、西郷は月照とともに死ぬつもりなのだと察し浜辺へ爆走します。が、時すでに遅し。船影さえ見当たらない錦海湾に向かって大久保が「吉之助さぁ~、死んではなら~ん!」と絶叫しているそのころ、当の西郷と月照は二人、手を取り合って錦海湾に身を投げるのでした。

「西郷どん」1~17話の総括

さて「西郷どん」、18話からは「島編」に突入です。17話まで観て私が思うことは「このドラマ、1部の主人公を斉彬にしといたほうがよかったのでは?」です。ほんとこれに尽きる。

斉彬が薩摩に帰国するところから物語を起こし、琉球王国・調所広郷の財政改革(調所服毒自殺と斉興藩政掌握の伏線)・奄美諸島の砂糖専売制(西郷大島遠島の伏線)等から、斉彬の政治思想と「日本国の中の薩摩」を描く。

江戸に戻った斉彬は阿部正弘と組んで安政改革を行う。斉彬・阿部を西郷・大久保と対比させ、今度は「西欧列強の中の日本国」を描く。富国強兵の必要性を感じた斉彬、強い将軍が必要だとの思いから一橋慶喜擁立を計画し、ドラマも将軍継嗣問題に移っていく。その後、斉彬の「お前はワシになれ」という言葉で主人公を西郷吉之助にスイッチ。

こうした展開なら17話で斉興が言い放った「財政改革で薩摩を立ち直らせたのはワシ」発言にも説得力が出ますし、西郷をそれほど深く掘り下げなくても、斉彬の姿を通して視聴者は西郷の政治思想・行動原理を理解することができたはずです。

本編はずっと「めざ…目指したはず…たぶん……(旅程シーンがないので想像するしかない)」とか、「うご、動き出したはず……(政治工作描写がないので想像するしかない)」みたいなシーンの連続。大河という冠の有無に関わりなく、ドラマとして三流だと思います。

林真理子の原作が希釈80%カルピスみたいな話の薄さで、これを50話にするには相当脚本家の腕が試されると思うのですが、尺が余ったらすぐに回想と大奥パートを入れる中園ミホは大河向いてませんね。

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