おんな城主直虎がつまらないのは脚本じゃなく演出と配役のせい【特盛】

直虎特盛

NHK大河ドラマ「おんな城主直虎」がつまらないのは脚本じゃなく配役と演出のせいでは…?という考察です。10月に加筆し「特盛りver.」になりました。2部から目立ち始めた主人公補正と、悪役不在の脚本にも言及してます。

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「おんな城主直虎」は不人気なのか?

メディアで「おんな城主直虎」が取り上げられると、必ずくっついてくる「低視聴率」というキーワード。近年の大河ドラマはどんな良作でも「低視聴率」や「人気低迷」のレッテルを貼られてコキ降ろされるのが常。あの平清盛や真田丸でさえ、低視聴率をネタに「面白くない!」「パッとしない!」と酷評されていたんですから、メディアの評価ほどアテにならないものもありません。

▼ちなみにメディアの評価を一切無視した私作の「2000年以降の名作大河ドラマ番付」がこちら。

関連2000年以降の大河ドラマ名作番付

ネットでは「脚本がつまらない!地味すぎる!」という感想が目立つ「おんな城主直虎」ですが、中世の陰鬱さ・悲惨さを前面に出した山本周五郎・藤沢周平的大河として見れば、脚本自体はそこまで悪くないかと。本作に関しては脚本よりも演出・キャスティングにこそ問題があり、この2要素が作品の足を引っ張っているように見える。というわけで、私の考える演出・配役の問題点を以下に挙げてみます。(※2部後半くらいから脚本の悪いところも目立ちはじめたので追記しました。)

なお、第33回「嫌われ政次の一生」は、別途感想記事を書きました。興味ある方はこちらから。

関連 おんな城主直虎「嫌われ政次の一生」感想。私が見たかった政次はこれじゃない!

1、キャスティングが悪い

例年の大河ドラマに比べるとキャスティングが異様に地味な、おんな城主直虎。特に井伊家家臣の中野直之や奥山六左衛門、瀬戸方久に三枚目俳優を起用したのが致命的で、これは視聴率にも確実に影響を及ぼしているはず。おんな城主直虎に関するツイートや感想がほぼ高橋一生絡みであることからも、「二枚目俳優少なすぎんねん問題」はかなり深刻だと言えるでしょう。

井伊家家臣
出典:NHK大河ドラマおんな城主直虎相関図

たとえば、ムロツヨシ演じる瀬戸方久が、渋い松本幸四郎や北大路欣也だったら?中野直之が、真田丸で真田家家臣・矢沢三十郎頼幸を演じた迫田孝也のような、高橋一生とタイプの違う男前だったら?きっと今よりも視聴者の興味を引いていたはずです。

序盤で三浦春馬、そして中盤の駿河侵攻で高橋一生が退場したあと、二枚目俳優枠は傑山(市原隼人)と、龍雲丸(柳楽優弥)のみになってしまう。どう考えてもここで大量の離脱者が出るため、おんな城主直虎の正念場は間違いなく政次処刑の直後になると断言できます。そんな状態で、果たして終盤のイケメン枠、井伊直政(幼名・虎松、菅田将暉)登場まで持つのでしょうか。

戦国大河のカリスマ・織田信長に大根役者の市川海老蔵を持ってきたり、個性俳優の唐橋充を龍雲丸の父親役(端役)に使う時点で今後もキャスティングが脚本の足を引っ張る予感しかしません。

【2017年10月追記】

おんな城主直虎38回「井伊とともに去りぬ」から、菅田将暉が満を持してのご登場!直虎から主人公ポジションを継承し、徳川に小姓として仕え出世していく過程が残り10話で描かれるようです。しかし、成長した虎松のキャラ付けが思ったよりも弱く、私はあまり菅田将暉版虎松に魅力を感じませんでした。菅田将暉が登場してから、より作品の地味さが増し、つまらなさが加速してしまったような……。

芸人を多用する=駄作になるリスク増

私の中には「アイドル・芸人を多数起用する大河は高確率で駄作になる」という認識があります。テコ入れとして行われることの多いアイドル・芸人の起用がプラスに働くことは極めて稀で、その素人演技が大河ドラマの緊張感を消し去り、作品のクオリティを下げるケースの方が圧倒的に多い。

おんな城主直虎一部では、今川が用意した偽家康役に芸人のほっしゃんが、検地のため井伊谷に派遣される岩松役に木村祐一が起用されており、あらすじを読むと二部からはダンカンや光浦靖子、TKOの2人も登場。こうした芸人多用のキャスティング、そこから生まれる素人演技も、おんな城主直虎をつまらなくしている原因の1つ。

2、直虎の主人公補正とご都合主義

この項「2、直虎の主人公補正とご都合主義」と、「3、悪役らしい悪役がいない」は10月になってから加筆したものです。12話が終了した4月に「脚本は悪くない!」と書いたものの、2部後半から女主人公大河にありがちな主人公補正が目立ち始め、脚本のご都合主義も目立ち始めました。

今川の寿桂尼も、井伊谷の村人も、龍雲丸たちも、これといった理由もないまま皆すぐ直虎に絆され、直虎を助けてしまう。直虎は直虎で、直親を暗殺した今川、政次を処刑に追い込んだ近藤、井伊谷を見捨て堀川城で虐殺を行った徳川、間者であった高瀬さえも菩薩のような心ですぐに許してしまう。これが主人公補正でなくて何なのでしょうか。こうした乙女ゲーム展開が続けば、当然「つまらない、面白くない」と感じる視聴者も出てきます。

3、悪役らしい悪役がいない

おんな城主直虎には、悪役らしい悪役がいません。正確に言うと、悪役は登場するのですが脚本家がそのバックグラウンドをとても丁寧かつ魅力的に描いているので、悪役が悪役の役目を果たしていないのです。要は、悪役がみんな「なんだか憎めないやつ」になってしまっている。おんな城主直虎がつまらなく思えるのは、こうした「悪役不在」も大いに関係しているのではないでしょうか。

政次の父である小野政直、直親を暗殺した今川家、そして井伊谷に攻め入ってくる武田信玄、政次を処刑した近藤康用……。おんな城主の脚本は、本来なら本作一番の悪役になるはずの武田信玄にさえ、劇中で「生まれ変わったら太陽になりたい。風雨を調略し大地を豊かにしたい」と言わせ、その人間的魅力を描きました。これじゃさすがに少し物足りない。はじめから政次を「叛臣」として描いていればこんな事にはならなかったんでしょうが、忠臣として描いちゃったからなぁ……。悪役らしい悪役のいない大河ドラマは、やはり見ててつまらないですよね。

4、うっとおしいキャプション

龍潭寺和尚・南渓と次郎法師のシーンでは頻繁に仏教用語も登場します。仏教用語や専門用語はキャプションで画面上にデカデカと表示されるわけですが、これが毎度うっとおしくてしょうがない!こうした「歴史に疎い視聴者へ向けた配慮」は不要でしょう。作中に登場した専門用語は公式サイトで解説しつつ、直虎紀行や歴史秘話ヒストリアで補完すれば済む話。よって、わざわざ作中にあんなキャプションを出す必要はない。

スポンサー・視聴者に配慮しすぎる演出については、大河ドラマ常連俳優の中井貴一氏が新潮45に寄稿した「撮影現場の『コンプライアンス』狂騒曲」に詳しいので、興味ある方はぜひご一読を。

中井貴一氏は記事内で「ついにドラマもここまで落ちたか」と語っていますが、NHK大河ドラマも年々「視聴者に配慮した過剰演出」が顕著になっており、作品の質を著しく低下させています。今はTwitterもあることだし、もっと視聴者に不親切なくらいで丁度良いんですけどね。「分からない人はggrks!」で良いんですよ今は。キャプションだけでなく、囲碁シーンでもたまに「パチーン!」という効果音出したりするでしょ?ああいうのも、わざわざ付けなくていい。視聴者の頭の中で勝手に鳴るんだから、そういうのは。

5、破壊的に合ってない劇伴

大河ドラマの演出で重要な役割を担う劇伴。悲壮なシーンをより悲壮に見せ、合戦をさらに盛り上げる音楽は、まさに「演出の要」。

おんな城主直虎の劇伴を担当しているのは、日本屈指のメロディーメーカー菅野よう子です。ただ、ギターやサックス主体の菅野楽曲と大河ドラマが完全にミスマッチを起こしているので、劇伴が流れた途端ドラマが破綻するという有り得ない事態になっているのが現状。おんな城主直虎第27回「材木を抱いて飛べ」を調べてみると約17分ほど劇伴が流れていましたが、今後もう少し減らしてもいいのでは。

6、NHKが最高にあざとい

おんな直虎のサブタイトルに元ネタを仕込み、Twitterで話題にしてもらおう!という「あざとさ」には、初回からイラッとしていました。真田丸のSNSプロモーション成功に味をしめた公式がこんな形でしゃしゃり出てくると、視聴者は一気に白けムードになるため作品の心象まで悪くなります。

作中で度々登場する「ナレ死」も、サブタイトルに匹敵するほど最高にあざとい所業。おそらく制作陣は「ナレ死させればTwitterで視聴者がネタにしてくれるはず!」と踏んでいるんでしょうが、真田丸を意識した演出で視聴者におもねるのは完全に逆効果ですね。そもそも、おんな城主直虎が作中でやっているのは「真田丸のナレ死」というより「天地人のナレ合戦補完(怠慢オブ怠慢で評判最悪なやつ)」に近い。この脚本は、今後も合戦シーンを「高速関ヶ原」のように短時間で済ませ、Twitterで話題にしてもらおうと考えていそう。そういうあざとさが、ちょいちょい透けて見えます。

総括

というわけで、おんな城主直虎の不振要素は恐らくこれだろう……と思われる部分を挙げてみました。脚本自体はとても地味ですし、女性脚本家特有の現代思想エッセンスも盛り込まれてますし、お涙頂戴のご都合主義もわんさか出てきますが、脚本よりもその他要素が、おんな城主直虎をつまらなくしている原因ではないかと……。まあ2部後半からちょっと脚本の雑さも目立ち始め、ネタ切れですか?と言いたくなる強引な展開も増えましたが。

芸人多用のキャスティングだけ見れば完全に駄作ですが、脚本がそれをどう調理するのか……。そしてあらすじを読む限り、どう転んでも無理そうな「二枚目俳優少なすぎんねん問題」は、いずれ解決されるのか……。色んな意味で最終回まで目が離せない「おんな城主直虎」、まだまだ絶賛放送中!

▼おんな城主直虎関連リンク

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