真田一族関連図書の感想

真田信繁戦国乱世の終焉アイキャッチ

2016年の大河ドラマ「真田丸」がかなり好評ですが、こうした魅力的なドラマに出会うと「もっと詳しく知りたい!」という衝動に突き動かされますよね。しかし歴史本は高価な割に当たり外れが激しく、類似本も多い。そこで今回は、私がこれまで読んできた真田一族の関連本をまとめてレビューしてみます。

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真田太平記/池波正太郎

真田三代を描いた歴史小説では不動の人気を誇る、池波正太郎の「真田太平記」。「真田丸」では三谷幸喜氏が明らかにこの小説を意識した脚本を書いているので、ドラマを見ていると面白さも倍になります。500ページ12巻という長丁場ですが、1巻ずつ見せ場が設けられているので、飽きることなく読みすすめられる戦国歴史小説の金字塔。

作中にも登場する真田一族の拠点「沼田城」に関しては、同氏の「まぼろしの城 (講談社文庫)」がおすすめ。本作は真田太平記の前日譚とも言われ、9章で沼田景義と真田昌幸の調略戦が描かれています。

城塞/司馬遼太郎

真田信繁にとっての一大クライマックスである大阪夏の陣のバックグラウンドを知るためには欠かせない名作。本作で大阪牢人五人衆に興味を持ったら、まずは毛利勝永を題材にした獅子は死せずを読んでみてください。戦闘シーンの描写がかっこよすぎて痺れます。

真田三代/火坂雅志

「天地人」でおなじみの火坂雅志が真田一族を描くとこうなる、というのが本書。池波正太郎の「真田太平記」へのオマージュを感じさせる部分もありますが、重厚感が皆無で「ホームドラマ的」な仕上がりになっています。上下巻に引き伸ばしたせいか意味のない描写が目立ち、おまけ程度に登場する真田十勇士の存在感も空気。

真田好きなら読んでもいいと思いますが、好き嫌いがはっきりと分かれそうな小説。ちなみに私には合いませんでした。

真田信繁 戦国乱世の終焉/相川司

「真田氏が複雑に見えるのは【歴史に動かされた】から」というスタンスで書かれた真田一族の考察本。一般的に広く周知されている真田一族のイメージを打ち砕き、当時の制度や世相をなぞりながら具体的かつ生々しく真田三代を描き出している著者の意欲作です。第一次資料に基づいて展開されていく論説には並々ならぬ説得力があり、数ある「真田考証本」の中でもその素晴らしさは抜きん出ています。ただ色々すっ飛ばしすぎなところもある。

真田氏をかなり踏み込んで知りたい人に全力でおすすめしたい本であり、900円でも十分おつりがくる真田本の決定版!個人的には3000円払っても惜しくないと思える面白さでした。

真田幸村 大坂の陣秘録/津本陽

歴史小説の第一人者・津本陽が大阪夏の陣におかける真田の活躍を描く歴史エッセイ。真田忍侠記、幸村去影に次ぐ「真田もの」の三作目。読む人を選ぶ津本節も本書では控えめで、良い意味で万人受けする体裁になっているのがありがたい。

軍師も顔負けの戦略家と言われる真田一族の甲州流築城術、密集一丸突撃、影武者陽動戦などを掘り下げている佳作なので、真田好きだけでなく軍略・戦術が好きな人も読んで損はしないと思います。

真田信繁 幸村と呼ばれた男の真実/平山優

大河ドラマ「真田丸」の時代考証も務めている平田優氏の著書。フィクションではなく生身の人間としての真田信繁を知りたいなら、この本は大変良い教科書。

分かりやすい図解と詳しい解説がついており、真田丸の構造も視覚的に理解しやすい。逆に、軽い気持ちで読むとその熱量に圧倒されて頭がパーンとなります。真田関連資料の文献リストを見るためだけに購入しても損はしないと断言できる、真田信繁本のバイブル。

情報量の多さなら負けていない同氏の「大いなる謎 真田一族 最新研究でわかった100の真実」、「真田三代」とご一緒にどうぞ。

真田四代と信繁/丸島和洋

とても堅実な真田一族の考証本。参考文献の多さでは平山優氏に負けておらず、しっかりとした考察の上に書かれているので文章の持つ重みがすごい。真田一族の史実を詳しく知りたければ、平山優と丸島和洋を読んでおけば間違いありませんね。

本書では真田三代に信之を加えて「真田四代」とし、いつもならスルーされがちな大阪夏の陣以後の治政ぶりについても詳しく言及しているところに好感が持てる。信之クラスタ必読の良書。文句なしの星5つ。

《図説》真田幸村がよくわかる本/大人のための歴史研究会

真田一族の相関図をはじめ、合戦地図なども豊富。戦況がビジュアルとして捉えられ、小説や他の真田研究本を読む際の手助けになる本です。また、史跡が豊富な写真とともに紹介されているのも魅力の1つ。小学生~中学生の子供にもおすすめの真田入門ハンドブック。

真田信幸 天下を飾る者/岳真也

政治家タイプと例えられることが多い真田信之は上田・松代の基礎をつくった名君でありながら、父・昌幸や弟・信繁に隠れてあまり目立たない人物。その目立たない人物を表題にもってくるということは…!とさぞ期待したが肩透かしをくらいました。

本書のメインはやはり大阪夏の陣までで、松代での治政やお家騒動の一件に関してもわずかに言及している程度。掘り下げも浅く、一通り真田家の知識がある人が読むと物足りなさを感じる内容です。この本を読むならWikipediaを読みましょう。

真田幸村と真田丸の真実 徳川家康が恐れた名将/渡邉大門

一般的によく知られるところの真田三代の通史の上面をなぞっただけ、という感じで読み応えがありません。わざわざ購入しなくても、この本に書いてあることはすべてWikipediaに書いてあります(しかもWikipediaの方が詳しい)。

真田丸の謎―戦国時代を『城』で読み解く/千田嘉博

城郭考古学を専門とする著者が真田丸をはじめ上田・沼田などの真田の築城技術について解説しているのが本書。私は本書を読んで真田の築城技術を知れば知るほど、海外要塞攻城の名手と言われたセバスティアン・ヴォーバンがこの時代にいたら…という妄想をしていました(イタすぎィ!)。海外の城塞・要塞と比較しながら技術の違いを楽しむのもアリ。

同氏の著書には他にも「真田信繁『勝利』への条件」がありますが、こちらは値段のわりに中身が薄っぺらい、よくある真田三代の通史という感じですね。真新しさもなく、わざわざ読んだ時間がもったいなかったなと感じるレベル。

地形で読み解く『真田三代』最強の秘密/橋場日月

真田丸が大阪城南東に築かれた理由や上田盆地の重要性に触れてはいるものの、「地形で読み解く」というほどではなく、さらっと触れているだけという印象。あきらかな誇大広告。内容はよく見る真田三代の通史で、地理学的要素を期待するとがっかりする内容です。

これ1冊でまるわかり! 真田幸村と真田一族のすべて/歴史謎解き研究会

これもよくある真田三代の通史で、ほぼWikipediaに書いてある内容。薄めに薄めたカルピスのような内容なので購入する必要なし!

真田三代風雲録/中村彰彦

おそらく著者が書きたいことがまとまっていないんだろうな…という雑多な印象を受ける本です。950ページとボリュームこそあるものの、その大半が真田に関係ない情報。作中に無駄な情報が氾濫しているため、読み進めるのがしんどく感じることが多々ありました。読み物としての面白さも少ないので今後もし再読しないだろう作品。

今年は書店でも至る所で「真田丸ブックフェア」コーナーが開設されているので、選者となる書店員の好み次第では「え、それ一般人に勧めちゃうの…」と言いたくなるような、かなりディープな本が日の目を見ることになるでしょう。

「真田丸」は三谷幸喜完全オリジナル脚本なので原作は存在しませんが、真田太平記をはじめ多くの真田本を読んでおくと、今後ニヤニヤしながらドラマを見ることができるはずです。

初投稿:2016/2/3
追記:2017/7/6

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