派遣社員で就業し退職した後、以外に面倒なのが雇用保険受給の手続き。基本手当やアルバイトした時の受給額計算、そして公共職業訓練を受講する際の落とし穴など、今回は「派遣社員が会社都合で辞職した場合の雇用保険受給」について、間違えやすい5つのポイントを解説します。
目次
1、退職から雇用保険受給までの流れをざっくり把握
派遣社員の退職~雇用保険の手続きまでの流れは概ね以下のようになります。
会社都合での雇用保険受給のフロー(派遣社員の場合)
退職
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退職から一ヶ月経っても派遣会社から仕事の紹介がなく、求職中の状態
↓
ハローワークにて雇用保険受給の手続き
↓
雇用保険受給 開始
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就職活動
↓
雇用保険受給期間満了につき時給終了
雇用保険を「会社都合」で受給する場合、派遣社員は辞職から一ヶ月待つこと!
社会保険は、週に20時間以上勤務する仕事であれば、正社員・派遣社員などの職業身分に関わりなく加入義務が発生します。雇用保険の受給資格は、最低でも「6ヶ月以上社会保険料を納めていること」。派遣社員は3ヶ月などの短期就業での求人もありますが、退職後に雇用保険を受給するなら雇用期間が6ヶ月以上のものを選んでおかなくてはなりません。
契約期間満了で退職してから一ヶ月の間に派遣会社が次の仕事を斡旋できなかった場合は「会社都合での退職」とみなされ、ハローワークでの手続き後すぐに雇用保険が受給できます。一方、退職後一ヶ月の間にハローワークで雇用保険受給の手続きをしてしまうと「自己都合での退職」とみなされ、雇用保険受給まで三ヶ月間の待機期間が設けられるので気をつけましょう。
契約期間満了で退職した一ヶ月後、派遣会社に被保険者資格証の送付をお願いすると以下のような書類が届きます。ハローワークに雇用保険の申請に行くときは、この書類を持参する必要があります。
出典:ハローワークインターネットサービス – 雇用保険手続きのご案内
雇用保険の受給期間は自己都合・会社都合に関わりなく「辞職から一年未満」が条件
自己都合・会社都合に関わりなく、雇用保険が受給できるのは「退職日から一年以内」と定められています。この期間中に近隣のハローワークに行き、総合受付で求職申し込みを行なったあと、雇用保険の受給申し込みを行ないます。
申し込みが遅れ、受給期間が一年後の退職日を過ぎてしまうと受給資格を「失効」し、受け取れるはずの雇用保険をドブに捨ててしまうことになるので、申し込みは早めに行なうようにしましょう。
もしも病気などですぐに就業ができない場合は、雇用保険の受給を保留する「雇用保険受給延長手続き」がありますので、ハローワークで申請を行い受給資格を延長させておくのがベター。
2、受給資格決定
ハローワークで雇用保険の申請をしたら、会社都合退職の場合7日の待機期間が設けられます。そして7日後、再度ハローワークに出向いて「受給説明会」に出席しなければなりません。受給説明会は、会議室のような場所に大勢の受給者を集めて行われます。時間ギリギリに行くと空席が少なく前の方に座らされるので、遅くても15分前には行くようにしましょう。
説明会の内容は、ハローワーク職員から雇用保険受給に関しての注意事項、VTRで求職活動のやり方、最後に年金免除の手続き(希望者のみ)の3つ。説明会が終わればその日は帰宅してもOKですが、ほとんどの方がパソコンで求人検索をし「求人活動の実績」を1つ作ってから帰ります。せっかくハローワークに出向いたのですから、もしもの時の「保険」として求人検索をしておくようにしましょう。
3、求職活動のやり方
求職活動の実績にカウントされるのは以下のような活動です。
- ハローワークでの求人閲覧(時間的は5分程度でもOK)
- 職員への職業相談
- 職業訓練の相談(ただし実績にカウントされるのは初回の相談のみ)※その後、訓練先への電話問い合わせ、説明会への出席なども一切カウントされませんので注意
- 求人への応募(ハローワークでの応募・インターネット上での個人応募問わず)
ここが間違いやすい! 求人実績のカウント
ハローワークで同日中の求人活動(求人閲覧・職業相談)は全て1回とみなされます。
初めて雇用保険を受給し、実績を作る人がもっともやりがちなのが、「同日中のハローワークでの実績作り」。パソコンでの求人検索と、職員への職業相談を行っても、それが同日中なら実績は「2」ではなく「1」になるので気をつけましょう。
簡単に求人実績を作る方法
いちいちハローワークに行きパソコンで求人検索をするのも、面接に行くのも面倒くさい!という人はネットで応募実績を作るのがおすすめです。転職サイトに掲載されている大手企業の求人にネット応募すると8割がた書類選考落ちするので、自宅にいながら簡単に応募実績が作れます。もし書類選考に通っても、サイト内のメールシステムから「やはり業務内容が想像と違ったので辞退したい」と送ればOK。自分から辞退しても「求人に応募した」という事実は残るので、これも実績としてカウントできます。
専門職などは、雇用保険受給期間内に求人が出ていない事も珍しくありません。しかし雇用保険を受給したいあまり、やりたくもない求人に応募し、受かってしまっては本末転倒!「元から不採用になるつもり」で応募実績を作りたいときは、ネットをフル活用するのがおすすめです。実績さえ作っておけば雇用保険も受給できますし、ゆっくりと希望職種の求人を探すこともできますからね。
ネットでの応募実績の作り方
- 転職サイトで大手企業にネット応募する
- 書類選考で落ちれば、失業認定申告書に「不採用」として記載(実績1としてカウントされる)
- 書類選考に合格したら、その時点で辞退を申し出る。失業認定申告書には「辞退」として記載(実績1としてカウントされる)
4、雇用保険受給中にアルバイトをしたい場合
雇用保険は毎月、在職中の過去6ヶ月の給与の8割に当たる「基本手当」が受け取れます。ただ、派遣社員は時給が低いので自然と基本手当も低くなりがちです。基本手当が一ヶ月10万以下というケースも珍しくないようですし、こうした低所得者層は雇用保険を受給しながらアルバイトをしたいと考える人も多いはず。
雇用保険受給中のアルバイトは「週に20時間以下」という条件さえ満たしていれば、許可されています。しかし勤務時間と一日あたりの所得次第では基本手当が減額になってしまうので、おおよその日給を計算して勤務時間を調整しておきましょう。
雇用保険基本手当の計算方法
①まずは、退職日から数えて過去6ヶ月の給与を合算します。
例) 150,000×6ヶ月=900,000
②①の給与合算額を180(6ヶ月=180日)で割り、賃金日額を出します。
例) 900,000÷180=5,000・・・この5,000円という額が、雇用保険でもらえる一日あたりの日額(基本手当)となります。
ここが間違いやすい! 雇用保険受給中のアルバイト
- 雇用保険受給中のアルバイトは条件つきで許可されています。
- 一日あたりの勤務時間が4時間を超える・・・4時間を超えると「就業」したとみなされ、その日は雇用保険を受給することができません。この日受け取れなかった基本手当5,000は消滅するのではなく、先延ばしになるだけなので将来的には受け取ることができます。
- 勤務時間の合計が週で20時間以上になる・・・20時間以上の勤務は就業したとみなされますが、一ヶ月未満なら受給資格がなくなることはありません。
5、公共職業訓練を受講する場合
職歴がない、あるいは希望する職種のスキルを身につけてより有利に就職活動を進めたい場合は、公共職業訓練を受講したいと考える人も中にはいると思います。ハローワークが開催している職業相談には「公共職業訓練」と「求職者支援制度」の二種類があり、雇用保険受給者が受講できるのは「公共職業訓練」のみです。
公共職業訓練の受講資格は「雇用保険受給者、またはハローワークから受給推薦を受けることができ、訓練後に関連の職種への就職を希望」している方に限定されています。訓練校や科目などはハローワークに掲示されているので、自分のスキルアップに役立ちそうな科目があれば受けてみるのも良いのではないでしょうか。
オフィス系の一般事務科だとMOSに合格できるレベル、WEBデザイナー初級・中級ならサーティファイのWEBクリエイターに合格できるレベルのスキルを身につけることができます。実務に通用するスキルとは言いがたいのですが資格欄に何も書くことがない方は受給しても損はないでしょう。
訓練の多くは外部のスクールが委託しており、開催時期は毎年ほぼ同じになっています。あまり人気のない科目だと受講人数が規定数に足らず、受講自体が取りやめになることもありますが、1~2人受講を希望していれば追加募集を行うことがほとんど。追加募集の有無を知るためには、ハローワークの窓口で「いま何人くらい願書を出していますか?」と聞いてみてくださいね。
職業訓練(就職に向けてスキルを身につけたい方へ) |厚生労働省
ここが間違いやすい! 委託訓練の募集
ネット上にも委託訓練の募集案内が掲載されていますが、「募集終了」となっていても追加募集されているケースがあります。追加募集案内はサイト上に掲載されないので、念のためハローワークの職業訓練窓口に問い合わせてみてください。追加募集の締切は通常募集が締め切られてから約1週間ほどなので、申し込むときはお早めに。
選考試験ではどんな問題が出題されるの?
委託訓練での選考試験では、義務教育程度の国語・数学試験が行われます。国語の場合は簡単な漢字の読み書き、部首の名前、四字熟語などが出題されるケースが多いようです。数学は、分数の計算、因数分解、単位変換など。試験時間は約40~50分なので文章問題はほとんど出題されないとのこと。
6、三回目の認定日後、最終認定日より前に残日数がなくなってしまう
雇用保険受給中は、四週間に一度ハローワークで失業認定を受けることになります。しかし、3回目の認定日のあと、残日数が最終認定日の前になくなってしまう場合は、どのように対応するべきなのでしょうか。
ここが間違いやすい! 残日数が0になったら?
残日数が0になると、その翌日にハローワークに言って認定を受けようとする人がいますが、これは間違い。認定日は個人によって「1型-月」といった風にあらかじめ決まっているものなので、たとえ残日数が0になってもその翌日が認定日になるわけではなく、これまで通り3回目の認定日から数えて28日後が「最終認定日」になります。
ここが間違いやすい! 空白期間の活動は?
空白期間の求人活動も実績として認められます。つまり、3回目の認定日の時点で残日数が3日でも、28日後の最終認定日までに実績を作っておけば実績不足にはなりません。通常、雇用保険受給には2回以上の実績が必要ですが、残日数が13日以下の場合は1回の実績でOKになっています。
まとめ
雇用保険を受給し始めても、正しい知識を持っていないと実績不足になったり、せっかくのスキルアップのチャンスを逃したりと損ばかりする羽目に。説明会で支給される雇用保険受給マニュアルをしっかりと読み、不明点があればハローワークの職員に聞いて自分で判断することは避けましょう。