よなかのはなし

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海洋学から漂流文学まで!海に関するおすすめ本ブックレビュー

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「海」をテーマにした本は無数にありますが、今回はその中からどっぷりと海の世界に浸れるおすすめの本をご紹介したいと思います。

海を深く知りたい人におすすめな海洋学関連本

海洋学(第4版)/ポール・R. ピネ

「Invitation to Ocenography」の第4版を翻訳した本書は、海洋学の学習において必要な全ての知識を網羅している海洋学学習者向けの本格派テキスト。内容は平易であるにも関わらず、要点がコンパクトかつ分かりやすくまとめられており写真や図解も豊富で理解を手助けしてくれます。海洋学独習者の教本ならこれ一択というくらい定番中の定番本。

 

本気で海洋学を学びたい人にとって本書ほど頼もしい味方はないでしょう。それくらい内容が充実しているおすすめの1冊。6千円と高価ですが絶対元取れます。

細かい目次まで確認したい方は、出版元である東海大学出版部のサイトをご覧ください。

 

海洋生物学 第2版

海洋学の中でも海や深海に住む生物種について詳しく学びたいときは、この海洋生物学がおすすめです。事前知識がなくても分かりやすい内容で独習者でも挫折しにくいのがメリット。

 

上で紹介したポール・R・ピネの海洋学でも第九章で海洋生物学について取り上げているんですが、海洋生物にちょっと興味があるとか、ガッツリ学ぶんじゃなく雑学程度に知りたい人にはこちらの海洋生物学の方が合っていると思います。底生生物あたりの話になると一気に面白さが3割増し。目次はこちらからどうぞ。

 

われらをめぐる海/レイチェル・カーソン

イギリスの海洋生物学者、レイチェル・カーソンが1951年に出版した「海のバイブル」と呼ばれる名著。海洋学者の間ではもはや読んでいるのが「常識」と言われるほどの作品であり、処女作「潮風の下で (岩波現代文庫)」、1995年に出版された「海辺―生命のふるさと」と合わせ、「海の三部作」と呼ばれています。専門的な知識がない一般人にも読みやすいのが嬉しい。

科学的な知見と感性の主張のバランスが絶妙で、何度も読み返したくなる中毒性がありますね。

 

深海生物学への招待/長沼毅

しんかい2000に乗って深海の調査を行った著者の冒険と研究の記録!という触れ込みですが、そのテーマの多くがチューブワームについてなのでこの生物に興味がない人は退屈に感じてしまうかもしれません。

ちなみにチュームワームとはこういう生物です。

 

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本書は筆者の熱量と筆力が凄まじく、途中チュームワームという言葉がゲシュタルト崩壊しそうになるものの読み始めると一気に引き込まれてしまい、最後には爽快な読了感と謎の感動が……。

 

海から歴史を紐解くならこの本を読め!

海と列島の中世/網野 善彦

島国である日本は古くから海と深く関わってきた民族。本書は日本史の中でも特異な発展を遂げた「中世」という時代にスポットを当て、当時の海上交通や漁民について言及しています。日本史が好きで尚且つ、海賊や交易という言葉にピン!ときた方は楽しく読めるのではないでしょうか。幕末や戦国時代もいいけど中世もくっそ面白いよ!

 

海洋帝国興隆史/玉木俊明

 ポルトガル海洋帝国の海運が西洋史にもたらした影響、当時の流通品の詳細などを知ることができる良書。海運を中心に近代ヨーロッパ史、及び資本主義の変遷を追いつつ、近代世界システムの成り立ちを学べる海事史関連本の中でも人気のある1冊。

 

倭寇ー海の歴史/田中健夫

九州の漁民や一部の豪族から結成され、密貿易や政治への介入を行い海賊と呼ばれた倭寇。この倭寇を前期倭寇と後期倭寇に分け、その行動を追いながら東アジア史への影響を考察しています。

 

底抜けの面白さ!日本と海外の海洋文学

海底二万里/ジュール・ヴェルヌ

海底2万マイル、あるいは海底二万里、地底旅行などさまざまな表題に訳されているジュール・ヴェルヌの古典海洋文学。出版されたのは1869年と古く、今日の海洋SF冒険小説の先駆け的な作品で、「私」として登場する教授、その使用人のコンセイユ、銛打ちのネッド・ランド、の3人が謎の潜水艦「ノーチラス号」に乗りネモ船長とともに世界一周をする物語。大人になってから読み返すと、子供の頃には分からなかった物語の本質が見えてくるはず。

 

愛する海 船長50年の航海記/石田貞夫

 幼少時に感じた船員への憧れから船乗りになる決意をし、若干15歳で処女航海を経験。そして船長に就任してから経験した、北洋・南氷洋での母船式漁船団のエピソード、阪神大震災遭遇時の話、深海調査業務の実情などが、生々しく、しかし情感にあふれた言葉で綴られているノンフィクション。

どのエピソードにも爽やかな感動があり、久しぶりに出会った「一人でも多くの人に読んでほしいと心から薦められる」本ですね。期を見て人に勧めまくっています。

 

海流のなかの島々(上・下巻)/アーネスト・ヘミングウェイ

ヘミングウェイの遺作である「海流の中の島々」は、老人と海に劣らない隠れた名作の1つ。内容は、妻や子供たちと離別し一人小島で暮らす主人公ハドソンの暮らしが描かれる一部、その息子達が事故や戦争で死亡し苦悩する二部、国からの指令を受け、ハドソンが自らの「仕事」のため戦いの場へ赴く、計三部から構成されています。

 海を舞台にした、ヘミングウェイ流のハードボイルド小説といえるでしょう。まだ読んでいない人は人生の3割損しているぞ!

 

恐ろしさで死ねる!漂流文学の名著

「漂流」吉村昭

江戸時代、土佐の船乗り長平は航海中に難破、仲間4人とともに伊豆諸島の火山島・鳥島にたどり着く。鳥島は焼島であるため資源に乏しく、無数のアホウドリを主な食料として12年間に渡る過酷な島暮らしの様子を描いたノンフィクション。

 

日本の漂流文学といえば、まず名前が挙がるのがこの作品。アホウドリをむさぼり食うシーン、そして仲間が絶命していくシーンなどはまるでドキュメンタリーを見ているような生々しさがありますので、南極物語苦手な人は多分読むの無理。日本における漂流文学の金字塔ですね。

 

 「エンデュアランス号漂流記」 アーネスト シャクルトン

1942年、南極大陸横断を目指してエンデュアランス号でイギリスを出発した探検家のアーネスト・シャクルトン、しかしウェッデル海の流氷に行く手を阻まれて船が破損のち沈没。ボートで無人島にたどり着くと今度は極寒の中、深刻な食糧不足と水の確保に悩まされることに……。

 

隊員全員を生還に導いたシャクルトンのリーダーシップと、漂流から22ヶ月間の極限のサバイバル生活の様子は一見の価値ありです。 シャクルトン自身の手記から構成されているため小説のような娯楽的要素を求めて読むと肩透かしをくらいますのでご注意。文章が淡々としているので、夜ベッドの中で読むと多分3分で寝落ちします。

 

「アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極」 角幡 唯介

1900年、北西航路開拓のために出発したジョン・フランクリン探検隊は、北極圏で消息を立ち、その後全隊員の死亡が確認されました。 遭難中に隊員同士でカニバリズムが行われたことやイヌイットにアグルーカ(大股で歩く男)と呼ばれた男がいたのではないかという謎を冒険家の角幡唯介が 実際にジョン・フランクリン探検隊と同じ航路をたどりながら綿密に記録したのが本書。

冒険家のルポルタージュ作品というくくりに留めるには惜しいと思うほど、圧倒的な描写力と筆力に驚かされググッと惹きつけられる名作です。私は一晩で一気に読みきりました。

 

「コン・ティキ号探検記」 トール・ヘイエルダール

「古代ペルー人は太平洋を渡りポリネシア人の祖先となったのか?」という学説を証明するため、古代の筏コン・ティキ号に乗って自ら太平洋に漕ぎ出たトー ル・ヘイエイダールの冒険記。

 世界的にもベストセラーとなり、二十世紀の名著に数えられることも多い作品です。 太平洋を筏で漂流している時にヘイエイダールが自身の目で見た海洋生物の話や、海上での食料調達の様子などがユーモラスな文章とともに綴られているので知的欲求が満たされますね。娯楽小説感覚でさらっと読めるので、漂流文学入門にはもってこいのライトな一冊。

 

 「太平洋漂流実験50日」斉藤実

「海水を飲むと死ぬ」という定説により、海上の遭難事故では海水を飲む行為を拒んだことが死因につながっているケースが非常に多いと言われています。

この 「海水を飲むと人は本当に死ぬのか」という定説を自ら実践・検証したのが、帆付擬似救命ボート「へのかっぱ号」で漂流実験を行なった斉藤実氏。斉藤氏は漂流しながら実験を繰り返し、最終的に海水を真水で3倍薄めると身体に害のない飲料水として利用できることを実証したというから、学者というのはやっぱり頭おかしい(褒めてます)。

 

 「大西洋漂流76日間」スティーヴン・キャラハン

ヨットが沈没し、ゴムボートで大西洋の真っ只中を76日間漂流した筆者による生々しい漂流記。
食料は海中を泳ぐシイラ、飲み水は自ら作った蒸留器を使って海水から真水を作るという過酷な状況の中、たった1人の力でどのようにして生き残ったのか……。読んでいて気持ち悪くなるくらい、次第に精神的に追い詰められていく様子が描かれている作品です。これあかんやつや。

 

まとめ

今回はかなり個人の思い入れが強い本を中心に紹介させて頂いきましたが、どれも買って損はしない、そればかりか一生ものになること間違いなしの名作ばかり。購入しなくてもいいので、本屋に行ったときでも軽く拾い読みしてそれぞれの本の中に広がる「海」にどっぷりと浸ってみてください。